母子世帯の平均モデルについて
(全国ひとり親世帯等調査から見る1)
1.
母子世帯の数は?
子世帯、いわゆるシングルマザー世帯は全国に119.5万世帯で、前回調査の5年前から少し減ってきています。日本の世帯総数は4,800万ちょっとですから、全体の2.5%ほどとなっています。
2.
母子世帯になる理由は?
圧倒的に離婚が理由で、79.5%となっていて、死別が5.3%です。そのほかは、未婚の母が10.8%という結果でした。
3.
母子世帯の就業状況は?
86.3%が就業していて、そのうち正規で働いているのは約半分の48.8%です。
ほぼすべてのシンママは働いて生活の糧を得ているのがよく分かります。そして、正規で働く方を除く残りの半分の方は、パート・アルバイトで生計を立てているのが実態です。
子どもの小さいうちは時間を制約されるのが難しいなど、理由はさまざまあるとは思います。しかし、ちなみに父子家庭の場合の父親の就業状況は、約7割が正規で働いていますので、そもそもこの国の構造的な問題が根底にあると言わざるを得ません。
4.
母子家庭になった時の母の年齢は?
生別だけの結果を見ますと、10代が2.1%、20代が24.2%、30代が42.4%、40代が20.8%となっていて、平均年齢は34.0歳です。
5.
母子家庭になった時の末子の年齢は?
0~2歳が38.1%、3~5歳が21.0 %で、約6割が未就学児がいる状態で生別(離婚)しているようです。末子の平均年齢は4.5歳となっています。昔から「乳飲み児を抱えて~」などといったものですが、文字通りの実態が浮かび上がります。
6.
母子家庭の収入状況は?
母子家庭での、母自身の平均年間収入は272万円で、うち就労による収入は236万円となっています。働いて得た賃金に、児童手当などの公的支援が年間40万円弱ある、それが母子家庭の平均的な収入モデルと言えそうです。
みなさんの世帯と比較するとどうでしょうか?ちなみに父子家庭の場合と比較しますと、父自身の平均年間収入は518万円ですから、その差は約2倍です。
平均モデルをまとめると…

40世帯に1世帯が
母子家庭
子どもは2人いて
下の子が4歳半ばで離婚
母が34歳のとき
離婚により母子家庭に
母は働いていて
その年収は236万円
養育費の取り決め状況
(全国ひとり親世帯等調査から見る2)
1.
離婚による母子世帯の養育費の状況は?
まず、離婚の際に「養育費」について誰かに相談したのか、です。ほぼ半数の50.2%が誰かに相談しています。相談相手は、親族・知人が51.7%で、これもほぼ半数です。残りの半数は、弁護士や裁判所や各種の支援団体などの専門家に相談しているようです。そして、「養育費の取り決めをしている」世帯は、46.7%です。
相談した50.2%で取り決めをしているが46.7%ですから、相関関係を証明できませんが、誰かに相談できたことが取り決めをすることに繋がっている、そんな流れを想像することはできそうです。
2.
口約束での養育費の取り決めをしている人の割合
養育費の取り決めをしている母子家庭のうち、文書で取り決めをしている世帯は76.6%で、文書なしの取り決めをしている世帯は23.1%です。
文書なしとは、つまり口頭の約束だけということでしょう。
3.
最終学歴別の養育費の取り決めをしている割合
中卒28.2%、高卒39.5%、高等専門校卒45.9%、短大卒59.6%、そして大卒以上が67.0%となっています。ちなみに、文書作成率も、だいたい高学歴になるほど高くなる傾向となっています。なお、父子家庭における取り決め状況は28.3%でした。これは、単純に父と母の経済力の差が表れていると見てよいでしょう。
4.
母の就労収入別にみた養育費の取り決め状況
もう一つ、注目しておきたいのが、母の就労収入別に見た養育費の取り決め状況です。母の就労収入100万未満40.5%、200万未満47.5%、300万未満49.3%、400万未満51.7%、400万円以上57.0%となっています。つまり、母の収入が大きくなるほど、取り決め状況は高くなっているのです。普通に考えると、母の収入が少ないほど、養育費の援助が大事になると思うところですが、実態は違うようです。
5.
なぜ養育費の取り決めをしなかったのか?
最大の理由は「相手とかかわりたくない(34.5%)」です。そして、「相手に支払う意思がないと思った(15.3%)」「相手に支払う能力がないと思った(14.7%)」「取り決めの交渉がわずらわしい(6.3%)」の順に続きます。
どうでしょうか? 約7割が、そもそも交渉以前にあきらめているのが実態のようです。ちなみに、交渉決裂はわずかに5.6%しかありません。
そして、もう一つ注目したいのが、母子家庭のうち養育費の取り決めを文書でしている世帯の離婚の方法です。協議離婚した場合の文書作成率は43.6%、その他の離婚の場合は81.2%と、とても高くなっています。その他の離婚とは、調停離婚、審判離婚か判決離婚ですから、何らかの形で専門家が携わっていると、文書作成率が飛躍的に高くなるようです。
まとめると……
母子家庭の約半数は
養育費の取り決めを
している
学歴、収入が高く、
知識があるほど
取り決め率もあがる
7割超えの人が
文書での取り決めを
している
専門家が関わるほど
文書での取り決め率が
上がる
誰かに相談できた人と
取り決めができた人は
相関関係にありそう
交渉決裂した
世帯は
わずか5%
養育費の受給状況
(全国ひとり親世帯等調査から見る3)
1.
養育費の受給状況は?
母子世帯の母の受給状況は、「現在も養育費を受けている(28.1%)」「養育費を受けたことがある(14.2%)」「養育費を受けたことがない(56.9%)」となります。
いかがですか、このあたりに母子家庭の生活困窮の根本的な問題が潜んでいると考えるのは、私だけではないはずです。未成年の子を養育する母の、なんと半分強は養育費を受け取ったことがないという実態にこそ、母子家庭の苦しさと、あとで書きますが、母子家庭の子の相対的貧困を生む大きな原因の一つではないでしょうか。
それと、これも母の最終学歴別に「現在も養育費を受けている」の割合を見てみます。中卒14.1%、高卒22.8%、高等専門校卒25.9%、短大卒37.9%、そして大卒以上が46.1%となっています。もちろん、「養育費を受けたことない」の割合は反比例します。
2.
離婚状況によって違いがある?
母子家庭全体の母の状況を比較しますと、現在も養育費を受けている世帯の離婚状況は、「協議離婚(26.1%)」「その他の離婚(49.2%)」となりました。
この結果は、取り決め状況と同じことが言えます。つまり、調停離婚など専門家が介在するほど、受給率が高くなると言えるということです。
もう一つ、注目してみたい視点があります。養育費の取り決めをしてある世帯の受給状況です。養育費の取り決めをしてある世帯の離婚状況別の差は、「協議離婚(57.0&)」「その他の離婚(60.0%)」です。その他の離婚が高いのですが、その差はわずかです。
この結果から、専門家が介在するその他の離婚→養育費の取り決めをしている→現在も養育費を受けている、といった流れが想像できます。
逆に言えば、養育費の取り決めをしてあれば、協議離婚であっても養育費を受給できる確率も高くなる、という相関関係も見えてきます。
3.
養育費を受給できているのは、何世帯?
「現在も養育費を受けている」と答えた(離婚による)母子家庭は292,392世帯あり、うち養育費の取り決めをしてあった世帯は281,890世帯だったことです。なんと受給できている世帯の96%は、養育費の取り決めをしてあるという事実です。逆に言えば、養育費の取り決めをしていないけど、養育費をもらえているという世帯はわずか5%にもみたない、つまり、まったく期待できないという事実です。
ちなみに、「受けたことがない」という母子家庭は503,646世帯ありますが、うち養育費の取り決めをしている世帯は92,456世帯となっています。
養育費を受給していない世帯のうち、約2割は取り決めをしてあるにも関わらず、受給できていない実態があります。これも大きな問題の一つです。
4.
養育費の金額は?
調査結果によりますと、母子世帯の平均額は50,485円となっています。
子どもの数別に見ますと、子ども1人40,468円、2人57,954円 、3人87,300円と続いています。意外に思うのは、子ども一人の場合が4万円で、子ども2人になると8万円とはなかなかならないことでしょうか。子どもが2人になると、3万円/1人あたりと調整されているようです。
まとめると…

現在も養育費
受給している
世帯は3割弱
養育費の受給額は
母子世帯
平均5万/月
一度でも受け取った
ことのある世帯でも
4割ほ ど
子どもの数が増えても
受給金額は単純に
倍々にはならない
養育費の取り決めをせず
養育費を受け取れる事は
ほぼない
親子交流の状況
(全国ひとり親世帯等調査から見る4)
1.
面会交流を人に相談したか?
結果は、相談したが「35.7%」で、相談していないが「60.8%」となっています。相談相手としては、親族・知人が54.0%で他は弁護士や裁判所、各種の支援団体となっています。
養育費の取り決めの際と比べて、相談している割合が若干低いようです。面会交流のことは(元)夫婦間で話し合うものと考えている方が多いのかもしれません。
2.
面会交流の取り決め状況は?
取り決めをしているのは全体の30.3%、していないのが66.6%という結果となりました。ちょうど1/3が面会交流の取り決めをしている状況です。面会交流の取り決めをしている世帯のうち、文書で取り決めている世帯は68.4%、文書なしは29.8%となっています 。
私は、思った以上に文書で取り決めているのだと驚きました。
3.
取り決めをしていない理由は?
現在も面会交流を行っているが30.2%、面会交流を行ったことがある20.9%、面会交流を行ったことがない45.3%という結果となります。45.3%の世帯の子どもたちは、親の離婚後、一度も生別した親と面会・交流できていないのが実情のようです。
ちなみに、面会交流の取り決めをしない理由には、子どもが会いたがらないという理由が7.5%ありましたので、一概に親の事情とは言い切れませんが、親に問題行動のおそれがないとしたら、もう少し面会交流の機会が多いほうが子どもの福祉のためになるのではないかと考えます。
4.
交流の頻度は?
月2回以上14.0%、月1回以上2回未満24.2%、2~3か月に1回以上16.9%、4~6か月に1回以上11.3%、長期休暇中6.6%といった結果になります。世帯の事情もありますし、子どもの年齢にもよりますから、頻度はバラバラの印象ですね。
5.
面会交流しない理由は?
最も大きな理由順で、相手が面会交流を求めない28.5%、子どもが会いたがらない16.1%、相手が養育費を払わない8.6%と続きます。一概に世帯状況や子どもの気持ちを推しはかれない複雑さを感じる結果となりました。やはり、私どもの実務でもかならずぶつかる問題ですが、子どもに関する重大事である面会交流は、慎重に、そしてそれぞれの実情に応じて柔軟に対応していくことが大切なのだろうと思います。
ちなみに、父子世帯における面会交流しない理由は、大きいものから順に、子どもが会いたがらない30.4%、相手が面会交流を求めない26.2%、相手が養育費を払わない7.5%と続きます。母子世帯とは対照的ですね。
まとめると…

面会ルールを
決めているのは
1/3の世帯
面会交流している
世帯の面会頻度は
まちまち……
面会ルールを
文書で決めているのは
7割弱
面会交流しない理由は
子どもが会いたがらないケースも
母子世帯の子どもたちの状況
(全国ひとり親世帯等調査から見る5)
1.
20歳未満の数は?
1人60.0%、2人29.9%、3人7.9%、4人以上1.9%となり、平均の子ども数は1.52人となります。
2.
子どもの進路状況は?
母子世帯の子どもの「中学校卒業後」の進路状況を見てみます。高校進学89.9%、その他の学校進学3.2%、就労0.6%となっています。
日本の高校進学率は97%ほどですので、やや低いという状況になっています。
そして、「高校卒業後」の進路状況です。短大3.3%、大学41.4%、専修・各種学校20.6%、就労22.2%となります。日本の大学進学率は50%台半ばを推移していますから、母子世帯の子どもの大学進学率はやや低いと言えるでしょう。
3.
子どもの最終学歴目標は?
母子世帯の母が希望する、子どもの最終学歴を見てみます。高校卒23.7%、その他学校20.2%、大学卒50.1%となっていますので、ほぼ8割の母は、高卒以上の最終学歴を望んでいることが分かります。ただ現実は、上記のとおり6割強の状況ですので、この落差をいかにして埋められるかが、母子世帯の子どもたちの将来を大きく左右するのだと言えます。
ちなみに、母子世帯の母の子どもについての悩みのトップは教育・進学で、全体の60.3%の母が心配していると回答しています。その他の心配はどんぐりの背比べといってよい状況ですので、ほとんどの母が子どもの進路を気にしているのが実態のようです。
まとめると…
母子世帯の子ども数の
平均は1.5人
進学率は全体平均より
やや低い傾向に…
母の最大の悩みは
「子どもの進学」